AIチップ需要が爆発、サムスンの時価総額が1兆ドルを突破

韓国の半導体大手サムスン電子が、AIチップ需要の急増を背景に時価総額1兆ドルの大台に到達し、台湾積体電路製造(TSMC)に次ぐアジア2社目の企業となった。HBM(高帯域幅メモリ)事業の急成長と戦略再編が、その躍進を支えている。

2026年5月6日、韓国の科技大手サムスン電子が正式に「1兆ドル時価総額クラブ」入りを果たした。当日の終値時点で、サムスンの株価は4.8%上昇し、時価総額は1兆200億ドルに達した。台湾積体電路製造(TSMC)に次いで、この目標を達成したアジア2社目の企業となった。このマイルストーンの背景には、人工知能チップ需要の持続的な急増がもたらす強力な推進力がある。

AIチップ需要:サムスンの第二の成長曲線

過去2年間、世界のAI演算能力をめぐる軍拡競争はエスカレートし続けてきた。NVIDIAを代表とするGPUメーカーの受注は急増し、世界最大のメモリチップメーカーであるサムスンは、高帯域幅メモリ(HBM)分野で重要な地位を占めている。HBMはAIアクセラレータの中核部品であり、大規模並列計算におけるデータ伝送のボトルネックを処理するために用いられる。サムスンのHBM3E製品はすでにNVIDIAやAMDを含む複数のAIチップ顧客に採用されており、これがメモリチップ事業の売上急成長を直接的に牽引している。

「サムスンのHBM事業は『追随者』から『リーダー』へと転換しつつあり、AI需要がこの伝統的な家電大手に全く新しい成長の原動力を注ぎ込んでいる。」――韓国の証券アナリスト 李東勲氏(仮名)

実際、AIチップ分野におけるサムスンの取り組みはメモリにとどまらない。同社のファウンドリ事業はTSMCには及ばないものの、3nm GAA(ゲートオールアラウンド)プロセスという差別化路線によって、すでに一部のAI推論チップの受注を獲得している。さらに、サムスンは自社のスマートフォンやサーバー製品向けのAI専用プロセッサの研究開発にも積極的に取り組み、AIエコシステムをさらに拡大している。

「追随」から「牽引」へ:サムスンの変革の道のり

サムスンの1兆ドル時価総額は一朝一夕に達成されたものではない。2017年のメモリ・スーパーサイクル時、サムスンの時価総額は一時7,000億ドルに迫ったが、その後数年にわたる低迷期に突入した。特に2022年から2024年にかけては、世界的な半導体不況サイクルと家電市場の低迷が重なり、サムスンの株価は30%以上下落した。転換点は2025年下半期に訪れた――生成AIアプリケーションの実装が加速するにつれて、HBMとDDR5メモリの需要が急増し、サムスンのDRAMとNANDの価格は反転上昇し始め、史上最高値圏まで上り続けた。

同時に、サムスンは戦略構造を積極的に調整した。2025年末、グループは半導体事業を独立した「サムスン半導体事業部」に分離し、今後3年間でAI関連技術の研究開発に1,500億ドルを投資すると発表した。この施策は市場から高く評価され、株価は半年以内にほぼ倍増した。

課題と懸念:1兆ドルを維持できるか?

サムスンは歴史を作ったが、1兆ドルの時価総額はゴールではない。TSMCと比較すると、サムスンは先端プロセスのファウンドリ分野で依然として約1世代遅れており、米国や日本などの国によるチップ補助金政策との競争にも直面している。さらに、HBM市場は急成長しているものの、主要な競合相手であるSKハイニックスがHBM市場シェアでサムスンを依然リードしている。さらに注目すべきは、AI需要の持続可能性である――世界経済が後退したり、AIの資本支出が鈍化したりすれば、単一の成長ポイントに依存する半導体企業は大きなリスクに直面することになる。

編集後記:アジアテクノロジーの新たな指標

サムスンの1兆ドルというマイルストーンは、同社自身の勝利にとどまらず、世界のテクノロジー産業の重心が東に移っていることを反映している。過去10年間、Apple、Microsoft、サウジアラムコなど一部の欧米巨大企業のみがこの高みに到達してきた。そして、TSMCとサムスンが相次いで突破したことは、AIハードウェアのサプライチェーンにおいてアジアがすでに代替不可能な地位を占めていることを意味する。長期的に見れば、サムスンがAIチップ設計や先進パッケージングといったより高付加価値の領域でブレイクスルーを実現できるかどうかが、その時価総額が1兆ドルを安定的に超え続けられるかを決定づけるだろう。AIが引き起こした今回の半導体競争は、まだ終局には程遠い。

本記事はTechCrunchから翻訳・編集したものである。